fluid_27’s blog

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「逆資本論」感想

井上純一さんの「逆資本論」を読みました。以前から読もうと思っていた本で、今回ようやく手に取りました。
以前の井上さんの経済漫画を全て読んでおり、今回も発売から時間が経ちましたが、読了しましたので感想を書いてみます。

今回の本は、前3冊とは異なり、経済だけでなく気候変動に関しても多くページが割かれていました。
これは著者の現状への危機感・経済対策を含む将来の展望において避けて通れない重要な議題であると感じました。

大筋としては、マルクスや「人新世の資本論」を書いた斎藤幸平氏の功績と共に誤りを挙げつつ、現実的な道筋について語っています。
具体的には資本主義の枠組みで気候変動対策が可能であると主張しており、その根拠や論拠を示しています。

一部の口コミでは、「個別の対策としては真っ当だと思うが、人生論の域には至っていないなと感じた」といった意見が見られました。
が、この本は人生論を探求したものではなく、あくまで現状の経済と気候変動に焦点を当て、その対策について述べたものだと思います。
(著者もそのつもりで書いてないはず。あくまでマルクスの「資本論」とは別物)

口コミでは特に以下が、本書について正確に評価しているように感じたので引用します。

井上先生は「中国嫁日記」で有名ですが、経済関連の単行本も何冊か出してまして、今回は世界史の授業で一度は聞いたことがあるだろうカール・マルクスの「資本論」がテーマで、これまでの単行本とは厚さからして違います。
最初に書いておきますと、タイトルが「逆資本論」とありますがアンチ共産主義の本ではありません。かと言って、共産主義万歳な本でもありません。
確かにソ連を始めとする共産主義国家は失敗しましたが、だからと言ってマルクスはすべて間違っているわけじゃないとは本書でも言及されています。そもそもマルクス資本論を書いたのは産業革命の時代、社会における格差と貧困の拡大が背景にあったのですが、これって現代にも当てはまりますよね? 更に現代は地球規模の気候問題もありまして、それらに対して私達はいかにすべきかを、資本論が書かれた時代背景から共産主義国家の誕生と失敗、現代の政治の諸問題なども絡めながら、マルクス経済学にヒントを求めたのがこちらの本なのです。
と、書いたらかなり固い本というイメージになると思いますが、漫画で分かりやすく説明してくれますからそこはご心配なく。
人類は歴史の中で少なからず間違いを犯して来ました。ですが同時に少なからず間違いを直して今日まで来たのです。
今回も、間違いがあればそれを直していけると信じています。

また、「れいわ新選組河野太郎、グレタさんを推している箇所で萎えた」という口コミもありますが、あくまでも「ある一方面では評価できる部分がある」と述べているにすぎず、別に推している訳ではないと個人的には感じました。
(ただ、個人的にはそもそもそこに言及する必要性は薄いようにも感じた)

いつも通り漫画でわかりやすく描かれているので、いきなり分厚い経済学の本に手を出すのが億劫な人にはもってこいの漫画だと思いますが、個人的には前3冊の方が発見が多かった印象です。
(著者が漫画やツイッターで紹介しているグリーンニューディール関連の本を事前に読んでいたというのもあるかも)

また、あえて物足りなく感じたポイントを挙げると

  • 再エネに関する箇所で、もう少し具体的な情報があるとよかった。欧州などで再エネに対する取り組みが加速しているのは分かるけど、日本でも欧州と同様の取り組みができる?現状どのような取り組みがなされている?また今後どのような取り組みが活発化されると想像できるか?など
  • 今回は気候変動に半分くらいボリュームを割いている印象なので(それだけ筆者が危機感を抱いているとも感じた)現在の日本で財政黒字化を目指すのはなぜ間違っているのかなどの説明が薄く、今回初めて井上さんの漫画を読んだ人はツイッターでよく見られるただの尖った意見(xx陰謀論)のようなものとして読んでしまう人もいるのでは?と感じた


著者の井上さんはいつも難しい経済学をわかりやすく漫画で伝えてくれているので個人的には好きですし、勉強させてもらっている部分も多いので、新刊出たらまた購入すると思います。
経済に興味がある人や「人新世の資本論」を読んだ人はぜひ読んでみてください。